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34話 王都での再会と試練、そして二人の絆

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-07-15 07:00:39

 俺は思わずため息をついた。  やっと落ち着いたと思ったのに、また王都かよ……。

「そこを何とか頼むよ、な? 国王様の“直々の招待”だぞ?  名誉なことなんだぞ? 分かってるのか?」

 ギルマスは必死に説得しようとしてくる。  その顔には、“俺も断れなかったんだ”という苦労がにじんでいた。

「そちらの冒険者の方々のお口が軽いから、国王にバレてしまったじゃないですか」

「バレるって……いや、勲章をもらえるんだぞ?  とても名誉なことじゃないか!」

「うぅ~ん……代役をお願いしますよ。俺、冒険者じゃないですし。  勲章にも興味ないし、要らないです」

 俺は手をひらひらと振って、やんわりと拒否する。

 ――勲章なんかもらったら、何かあったときに“呼ばれる”じゃん。  王都で事件が起きるたびに「勲章持ちの君、出番だよ」って言われる未来が見える。  面倒なことは、できれば避けたい。

「それはダメだろ……俺は、国王には嘘はつけない」

 俺は真顔でそう返した。

「じゃあ……今度、困ったときに助けてくださいよ?」

 ギルマスが少しだけ遠慮がちに言う。

「ああ、分かった。俺にできることなら、助けるよ」

 その言葉に、ギルマスはほっとしたように肩の力を抜いた。

「……えぇ~、また行くのですかぁ……ユウヤ様」

 背後から、ミリアの不満げな声が聞こえてきた。  振り返ると、彼女は唇を尖らせて、じとっとした目で俺を見ている。

「ミリアはお留守番でもいいよ?」

「はぁ? わたくしを置いていかれるつもりなのですか? ひどいです……」

 ミリアはぷくっと頬を膨らませた。

「だって、ミリアが行きたくなさそうだったじゃん?」

「ユ

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